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自省録

2013/4/7 荒野の狼

【走った距離】  20.48km
【今月の累積距離】  62.84km
【ペース】 平均 5'48"/km、 最高 5'22"/km
【天気】 雨のち晴れ 
【気温】 最高 13℃、最低 9℃
【体重】  64.5kg
【コース】
自宅~豊里大橋
【コメント】
荒野の狼(ヘルマン・ヘッセ)
2013/4/7 荒野の狼_b0217643_1955619.jpg


車輪の下は高校生のヘッセの魂の彷徨だったが、
荒野の狼は50歳のヘッセのもがき苦しむ魂の遍歴である。
もっとこの小説は読まれるべきであると思う。

先ごろローマ教皇を退いたベネディクト十六世も、
この作品を彼の愛読書として挙げている。

人生に敗れ、家庭生活を亡くしたハリー・ハラー。
文芸とクラシック音楽を愛して孤独に暮らすが、
心の中では社会や時代を嫌悪する狼と葛藤していた。
ハリーはあるときは狼として、またあるときは人間として生きていた。
感受性の強いハリーの心情を支配するものは、
孤独、不安、絶望、故郷喪失であり、
自己嫌悪から生まれる苦悩である。
この彼の苦悩を象徴するのが、人間と狼の二元論である。

苦悩に満ちたハリーが自殺の衝動から逃れるために駆け込んだ酒場で
ヘルミーネに出会う。
ハリーにとってのヘルミーネは
 ファウストにとってのフィストフェレスであり、
 ダンテにとってのベアトリーチェであり、
 スクルージにとっての精霊である。
このヘルミーネからハリーはダンスを学ぶことによって、
自己の精神に柔軟性を与えることを学ぶ。
ヘルミーネに紹介されたマリーアとの性愛の経験から
ハリーは内面に抑圧されているものを解放することを学ぶ。
そして謎のサキソフォン奏者であるパブロは、
魔術劇場を主宰する永遠の世界の人間であり、
ハリーの目指すべき理想のモデルとして登場する。
 ハリーはこの三人との出会いによって
「単純化してごまかす眼鏡」である二元論の限界を知り、
その克服の必要性を感じて、自己の魂を拡げようとする。
偽ることなくありのままの自分と向き合い、
自分の無意識に入り込んで魂の混沌と対決し、
完全な自覚に到達しようとする。
 自己の魂を拡げる最後の試練として、ハリーは仮面舞踏会に参加する。
そこはハリーにとってワルプルギスの夜であり、サバトであった。
ハリーはヘルミーネとのダンスにおいて自我を陶酔的に消滅させ、
集団の中に個を没入させる「神秘的統一」を経験する。
さらにパブロによって魔術劇場に導かれ、そこで自我と向かい合う。
自我の分裂を目の当たりにし、
また過去の自分の姿や無意識の中に抑圧された自分の欲望を
仮想現実として経験する。

 今夜深夜四時から魔術劇場へご招待
  ―入場は狂人のみ―
 入場料として、理性を支払うこと。
 入場は限られた人のみ。ヘルミーネは地獄にいる。

荒野の狼を笑い飛ばすことによって抹殺する。
「よく笑いましたね、ハリー」とパブロは叫んだ。
「あなたはやっとのことで荒野の狼を殺したんです。」

荒野の狼を克服することによって、ハリーの人格が解放される。
鏡に映っている自分の姿が目に入った。
 私はほんのわずかな瞬間、あの馴染みのあるハリーの姿がみえたが、
それは今まで見たことのないほど機嫌の良い、明るい笑顔をしていた。
しかしそれがハリーであるとわかったとたん、
その像はバラバラになってしまい、
そこから第二の像が切り離され、第三、第十、第二十の像が切り離され、
巨大な鏡全体が、もっぱらハリーの像で、
あるいはハリーの像の断片や無数のハリーの像で埋め尽くされた。
そのいずれも私はただ一瞥しただけで、すぐにハリーであるとわかった。
この多くのハリーの像のうち、いくつかは私と同じ年齢であり、
またいくつかの像は私より年上であり、いくつかはとても老齢であり、
他のいくつかの像はごく若くて青年であり、少年であり、
生徒であり、腕白小僧であり、子供であった。
五十歳と二十歳のハリーがいっしょに入り乱れて走ったり、飛んだりしていた。
三十歳と五歳のハリーが並んでいたが、それは真面目なものと陽気なもの、
威厳のあるものと滑稽なもの、身なりの良いものとボロを着たり丸裸のもの、
禿げ上ったものと長い巻毛のものなど対照的であったが、
すべてが私の像であった。
どの像も私がちらっと見ただけで、すぐにそれと見分けられ、
そして再び姿を消した。
それらは入り乱れてあらゆる方向に滑るように動き、左へ右へ、
そして鏡の奥へ入っていくものもあれば、鏡から飛び出して来るものもあった。

このような経験によって、彼の魂を拡げる試みは成功したかに思われが、
パブロの腕のなかで眠るヘルミーネの姿を見せつけられ、
彼は、戯れや幻想からなる魔術劇場を現実と取り違え、
嫉妬に駆られて思わず彼女をナイフで刺してしまう。
彼はいまだにユーモアを身につけていないことが明らかになる。




by totsutaki2 | 2013-04-07 20:05 | 読書

市民ランナーの市井の日常。 日々の出来事、感動を忘れないために
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