2013/2/5 村上春樹 雑文集5 小説についての随想
【走った距離】 5.91km
【今月の累積距離】 73.545km
【ペース】 平均 6'37"/km、 最高 5'59"/km
【天気】 晴れ
【気温】 最高 8℃、最低 6℃
【体重】 65.3kg
【コース】
淀駅~会社
【コメント】
小説についての随想3点。
○芸術は鉱脈
芸術家には二つのタイプかあります。
ひとつは地面近くに油層のようなものがあって、
それが勝手にどんどん湧いてくるタイプ(いわゆる天才タイプ)、
もうひとつは地面深くまで掘っていかないと油層にぶちあたらないタイプです。
僕は残念ながら天才ではないので、せっせとつるはしを使って、
硬い地層を掘りつづけなくてはなりませんでした。
でもおかけで地層を掘る作業にはかなり精通することになりました。
そのための筋肉もしっかりとついています。
だからそういう作業を、、これからもずっと同じように続けていげばいいわけです。
自分のペースを確実に保ち続ける、と僕か言うのは、そういう意味です。
○小説の普遍性
僕の小説が語らうとしていることは、ある程度簡単に要約できると思います。
それは「あらゆる人間はこの生涯において何かひとつ、
大事なものを探し求めているが、それを見つけることのできる人は多くない。
そしてもし運良くそれが見つかったとしても、
実際に見つけられたものは、多くの場合致命的に損なわれてしまっている。
にもかかわらず、我々はそれを探し求め続けなくてはならない。
そうしなければ生きている意味そのものがなくなってしまうから」ということです。
これは--僕は思うのですが--世界中どこだって基本的には同じことです。
日本だって、中国だって、アメリカだって、アルゼンチンだって、
イスタンブールだって、チュニスだって、どこにいたところで、
僕らか生きていることの原理というものはそんなに変わりはしない。
だからこそ我々は場所や人種や言葉の違いを越えて、
物語を--もちろんその物語がうまく書けていればということですが--
同じような気持ちで共有することができるわけです。
言い換えれば、僕の部屋は
僕のいる場所を離れて、遠くまで旅をすることができるわけです。
それは疑いの余地なく素晴らしいことです。
○小説を書くきっかけ
そしてある日、僕は小説を書こうと思いました。
どうしてそんなことを思いついたのかうまく思い出せません。
でもとにかく書いてみようと思ったのです。
それで文房具屋に行って万年筆と原稿用紙を買ってきました
(そのときは万年筆も持っていなかった)。
夜遅く仕事が終わってから、一人で台所のテーブルに座って
小説(のようなもの)を書きました。
一人で、馴れない手つきで、その僕自身の「部屋」を少しずつこしらえていったわけです。
僕はそのとき、偉大な小説を書くつもりはありませんでしたし(書ける見込みもなかった)、
人を感心させるようなものを書こうとも思いませんでした。
ただ自分にとって落ちつける、居心地のよい場所をそこに作り上げたかったのです。
自分を救うために。
そしてそれがほかの人々にとっても落ちつける、
居心地の良い場所になればいいと思いました。
そのようにして僕は『風の歌を聴け』という短い小説を書きました。
そして小説家になりました。
【今月の累積距離】 73.545km
【ペース】 平均 6'37"/km、 最高 5'59"/km
【天気】 晴れ
【気温】 最高 8℃、最低 6℃
【体重】 65.3kg
【コース】
淀駅~会社
【コメント】
小説についての随想3点。
○芸術は鉱脈
芸術家には二つのタイプかあります。
ひとつは地面近くに油層のようなものがあって、
それが勝手にどんどん湧いてくるタイプ(いわゆる天才タイプ)、
もうひとつは地面深くまで掘っていかないと油層にぶちあたらないタイプです。
僕は残念ながら天才ではないので、せっせとつるはしを使って、
硬い地層を掘りつづけなくてはなりませんでした。
でもおかけで地層を掘る作業にはかなり精通することになりました。
そのための筋肉もしっかりとついています。
だからそういう作業を、、これからもずっと同じように続けていげばいいわけです。
自分のペースを確実に保ち続ける、と僕か言うのは、そういう意味です。
○小説の普遍性
僕の小説が語らうとしていることは、ある程度簡単に要約できると思います。
それは「あらゆる人間はこの生涯において何かひとつ、
大事なものを探し求めているが、それを見つけることのできる人は多くない。
そしてもし運良くそれが見つかったとしても、
実際に見つけられたものは、多くの場合致命的に損なわれてしまっている。
にもかかわらず、我々はそれを探し求め続けなくてはならない。
そうしなければ生きている意味そのものがなくなってしまうから」ということです。
これは--僕は思うのですが--世界中どこだって基本的には同じことです。
日本だって、中国だって、アメリカだって、アルゼンチンだって、
イスタンブールだって、チュニスだって、どこにいたところで、
僕らか生きていることの原理というものはそんなに変わりはしない。
だからこそ我々は場所や人種や言葉の違いを越えて、
物語を--もちろんその物語がうまく書けていればということですが--
同じような気持ちで共有することができるわけです。
言い換えれば、僕の部屋は
僕のいる場所を離れて、遠くまで旅をすることができるわけです。
それは疑いの余地なく素晴らしいことです。
○小説を書くきっかけ
そしてある日、僕は小説を書こうと思いました。
どうしてそんなことを思いついたのかうまく思い出せません。
でもとにかく書いてみようと思ったのです。
それで文房具屋に行って万年筆と原稿用紙を買ってきました
(そのときは万年筆も持っていなかった)。
夜遅く仕事が終わってから、一人で台所のテーブルに座って
小説(のようなもの)を書きました。
一人で、馴れない手つきで、その僕自身の「部屋」を少しずつこしらえていったわけです。
僕はそのとき、偉大な小説を書くつもりはありませんでしたし(書ける見込みもなかった)、
人を感心させるようなものを書こうとも思いませんでした。
ただ自分にとって落ちつける、居心地のよい場所をそこに作り上げたかったのです。
自分を救うために。
そしてそれがほかの人々にとっても落ちつける、
居心地の良い場所になればいいと思いました。
そのようにして僕は『風の歌を聴け』という短い小説を書きました。
そして小説家になりました。
by totsutaki2
| 2013-02-05 22:32
| 読書
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