自省録

2013/2/4 村上春樹 雑文集4 フィッツジェラルド

【走った距離】  5.79km
【今月の累積距離】  67.635km
【ペース】 平均 7'27"/km、 最高 6'57"/km
【天気】 雨 
【気温】 最高 10℃、最低 6℃
【体重】  65.0kg
【コース】
淀~会社
【コメント】
昨日の疲労のため歩くようなペースで会社までランニング。

J・D・サリンジャー、トルーマン・カポーティ、レイモンド・チャンドラー、
レイモンド・カーヴァーなど、村上春樹が影響を受けたアメリカ人作家は多いが、
おそらく最も思い入れが深いのがF・スコット・フィッツジェラルド。
『ザ・スコット・フィッツジェラルド・ブック』、 『グレート・ギャツビー』などの
翻訳も手がける。
村上春樹のフィッツジェラルドについての評論も枚挙にいとまがないが、
以下はフィッツジェラルドの小説が、
村上春樹の小説体験の基準点または原点であることを物語る雑文。

 1929年の大恐慌でアメリカの夢そのものが潰えてしまったのと
ほとんど同時に、スコット・フィッツジェラルドの輝かしい神話も急速に精彩を失い、
古くなった土壁のようにぼろぼろと崩れ落ちていった。
我々はフィッツジェラルドの残した作品群を年代順にたどりながら、
その「冬の夢」の宿命的な崩壊ぶりを、まざまざと目にすることができる。
おそらく、あまりにも鮮やかな幻影は、あまりにも鮮やかに壊れるのだろう。
その光景は、我々の胸を痛くする。

 僕のまわりにいるスコット・フィッツジェラルドの愛読者に話を聞くと、
「フィッツジェラルドの残した長編小説の中で、
質としてもっとも高いのはなんといっても『グレート・ギャツビー』だけど、
個人的にもっとも心を惹かれるのは『夜はやさし』かもしれない」と口にする人が少なくない。
 実を言えば、僕もそれと意見を同じくする一人だ。
どちらの作品もずいぶん何度も読み返しだのだが、
その両者が与えてくれる印象は、長い歳月を経てもほとんどまったく変化しない。
『グレート・ギャツビー』は見事なまでに美しく、そして完成されている。
その文体には実に無駄がなく、そして自然な華がある。
その一方で『夜はやさし』は見事なまでに(文字通り)心優しく、
そこには魂を惹きつけるものがある。
二十歳の頃から今に至るまで、その両者の与えくれる印象はぴたりと同じままだ。
その二冊の小説はまるで対をなすように、
同じスタンスを維持したまま、僕の精神の少し異なった場所に、
それぞれしっかりと腰を据えている。
 考えてみれば--この原稿を書くまでそれについてとくに深くは考えなかったのだけれど--
これはかなり珍しいケースかもしれない。
本というのは読む年齢によって、あるいは読む環境によって、
評価か微妙に変化し上下するものであるからだ。
シェイクスピアだってカフカだってチェーホフだってバルザックだって、
漱石だって谷崎だって、
そのときどきによって作品から受ける印象はけっこう変化していく。
読み直してみていくぶんがっかりすることもあれば、改めて再評価することもある。
同じ作家のものでもAという作品の方がBという作品より優れていると思っていたのに、
ある時を境にBの方がAより良くなったりもする。
それは小説だけではなく、音楽についても言えることだ。
そういう推移の中に、
我々は自らの精神の成長や変化を読み取ることができるかもしれない。
精神的定点を外部に据え、その定点と自分自身との距離の変化を測ることによって、
自らの居場所をある程度特定することがてざるわけだ。
それも文学作品を読み続けることの楽しみのひとつである。
 ところが、『グレート・ギャツビー』と『夜はやさし』という二冊の長編小説には、
もちろん僕の場合にはということだが、ぶれというものがまったくない。
北極星みたいなもので、こちらがどれだけ動いたところで、
位置関係はちっとも変わらないのだ。
空を見上げると、それらの作品はいつも同じ場所にきちんと明るく輝いている。

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by totsutaki2 | 2013-02-04 22:59 | 読書

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