自省録

2013/1/31 村上春樹 雑文集3 音楽

【走った距離】  6.03km
【今月の累積距離】  399.18km
【ペース】 平均 6'11"/km、 最高 5'42"/km
【天気】 快晴 
【気温】 最高 12℃、最低 2℃
【体重】  64.3kg
【コース】
淀駅~会社
【コメント】
ポップス、ジャズ、ロック...
ドアーズは私も好きです。

○音楽
 1964年まではアメリカのポップミュージックばかり聴いていました。
ビーナボーイズとかね。
当時イギリスのロックは数えるほどしかなかった。
ビートルズが世界に出てくる以前の話だから。
なんで1964年までと憶えているのかというと、その年に、
アートーブレイキ-&ジャズ・メッセンジャーズの来日コンサートを聴きに行って、
ジャズにぶっ飛んだからです。
フレディー・ハバードのトランペット、ウェイン・ショーターのサックス、
レター・ウォルトンーのピアノ、そしてブレイキーのドラム……とにかくすさまじかった。
それからはポップスとジャズの二本立て。
だからポップスはラジオから入って、ジャズはコンサートから入ったことになります。
そして高校生になって、クラシックにも目覚めた。
以後、僕の好きな音楽はずっとこの三本立てできていることになります。

○ザ・ドアーズ
 僕が最初に聴いたジム・モリソンとザ・ドアーズのレコードは
もちろん"Light My Fire"だった。
1967年のことだ。
1967年には僕は18で、高校を出て大学にも予備校にも行かず、
一日中ラジオで口ツクンロールを聴いていた。
他の年と同じようにその年にも実に多くのヒットッングが生まれたが、
"Light My Fire"は僕にとってはいわば例外的に強烈な印象を残した曲だった。
 「ハートに火をつけて」という日本のタイトルはあまりにも明るすぎる。
これはどうしたって
"Light My Fire"でしかないのだ。

Come on baby, Light my fire.
Come on baby Light my fire.
Try to set the night on fire!

さあ、ベイビー、俺に火をつけてくれ
さあ、ベイビー、俺に火をつけてくれ
夜を燃やしちまおうじゃないか!

 僕はこの曲のリフレインの歌詞をそんな風に理解している。
上品に「僕のハートに火をつけ」たり「夜じゅう燃えあがる」のではなくて、
もっと本当にフィジカルに、肉そのものに、夜そのものに火をつけるのだ。
そしてそのような奇妙に直裁的な感覚こそが、
ジム・モリソンという口ック・シンガーの生理なのだ。
この曲の作詞・作曲の殆んどの部分は
ギタリストのロビー・クリーガーによってなされたのだが、
にもかかわらずジム・モリソンの生理は完全にこのポッフなヒットソングを宰配している。
その証拠にジム・モリソン以外のシンガーが歌う"Light My Fire"を聴いてみるがいい。
彼らの歌はうまくいけば誰かのハートに火をつけることができるかもしれない。
しかしジム・モリソン以外のいったい誰が、
肉体そのものに火かつげることができるだろう? 
ミック・ジャガーにだってそんなことはできはしない。
 ジム・モリソンか死んだ時、我々の中のジム・モリソンもま心死んだ。
ジョン・レノンもボブ・ディランもミック・ジャガーも、
ジム・モリソソが残したその空白をひきうけることはできなかった。

○ビートルズ
 60年代70年代を通じて、ビートルズのレコードを買った覚えがない。
ラジオのスイッチをつければいやがおうでもビートルズ・ソングはかかっていたから、
彼らのシンダル・ヒットは全部知っている。
好きなものもあれば、
それほど好きじゃないものもあるけれど(好きなものの方がずっと多い)、
メロディーとタイトルはちゃんと結びついているし、
ピストルを突き付けられて「歌わないと殺す」と言われれば、いちおうは歌える。
でもあえてお金を払ってレコードを買おうと思ったことは、一度としてなかった。
それは僕にとってはあくまで、ラジオをつければ流れてくる「流行りもの」の音楽だった。
そういう音楽は当時の僕にとってはクールじゃなかった。
ベストセラー小説を買わないのと同じように、ビートルズのレコードは買わなかった。
 生まれて初めてビートルズのレコードを買ったのは、
1980年代に入ってからだったと記憶している。
日本を出て2、3年ヨーロッパに暮らしていたときに突然、
あたかも理不尽な性欲に路上で襲われるみたいに無性にビートルズの歌が聴きたくなって、
現地でカセットテープを買って聴いた。
不思議にそのときいちばん聴きたくなったのは「ホワイト・アルバム」で、
ギリシヤの何もない小さな島に住んでいるときには、
ラジカセでこればかり延々と聴いていた。
というようなわけで、最初に耳にしたときから二十年の歳月を経てやっと、
ビートルズの音楽っていいなあと初めて実感したわけだ。

b0217643_22472620.jpg



[PR]



by totsutaki2 | 2013-01-31 22:49 | 読書

市民ランナーの市井の日常。 日々の出来事、感動を忘れないために
by TOTSUTAKI
プロフィールを見る
画像一覧

ブログパーツ

メモ帳

最新のトラックバック

自省録
from 哲学はなぜ間違うのか
宝石のような輝をもった印..
from dezire_photo &..
美術史に新境地を開拓し「..
from dezire_photo &..
既成概念から絵画の解放に..
from dezire_photo &..
ハプスブルク家の悲劇 3..
from 投資一族のブログ

ライフログ

検索

最新の記事

2016/3/29 ブログ変..
at 2016-03-29 22:37
2016/3/27 ダイヤモ..
at 2016-03-27 21:01
2016/3/25 鳥せい本店
at 2016-03-25 22:59
2016/3/23 日本酒飲..
at 2016-03-23 20:30
2016/3/22 ブリュッ..
at 2016-03-22 23:25

外部リンク

ファン

ブログジャンル

画像一覧