2013/1/28 大江健三郎 「水死」
【走った距離】 5.93km
【今月の累積距離】 381.29km
【ペース】 平均 6'09"/km、 最高 5'35"/km
【天気】 くもり
【気温】 最高 6℃、最低 2℃
【体重】 65.3kg
【コース】
淀駅~会社
【コメント】
大江さんの小説は全て読んでいるが、昔に比べると格段に読みやすくなった。
昔の作品は1つの文章が1ページ以上続くことも稀ではなかった。
しかも英語の関係詞の構文を多用しているので、
どの語句につながっているのか判断するのが難しかった。
大江さんは英語で考えた文章を和訳して原稿用紙に書いているのではないか、
という説もあった。
最近の大江さんの小説は、今回の「水死」も含め、自然な文章なので、読みやすい。
極端に長い文章や関係詞を使った構文はない。
(つまり、若いころはわざと難しい文章を書いていたのだ。)
しかし、それでも親切とは言えない。
読者が増えることはない。
大江さんの小説は、SF作品以外はすべていわゆる私小説で、
過去の数十冊の自分の本を引用しながら書いている。
昔の本をベースにしてストーリーが展開されるため、
初めての読者はまず理解ができない。
今回の「水死」では「臈たしアナベル・リイ 総毛立ちつ身まかりつ」、
「みずから我が涙をぬぐいたまう日」は最低読んでいないと、理解ができない。
できれば「新しい人よ眼ざめよ」、「奇妙な仕事」、
「取り替え子(チェンジリング)」ぐらいは読んでおきたい。
さらに「万延元年のフットボール」、「同時代ゲーム」も通奏低音として押さえておきたい。
かくして大江さんは読者は増えず、
新刊の印税が入らないという問題を経験することになる。
今回の小説には次のような台詞がある。
私らが生まれた時、すでに長江(大江)さんの最盛期は終わってたんです。
しかもそういう子供が同時代の日本文学を読み始めるとすれば、
十八、九を過ぎてからで、どう考えても、長江さんは私らの作家ではありませんでした。
それはその通り。これは長江さんとしての本格小説ではある。
文体にしても構造にしてもさ。
しかし、この十年、十五年、長江さんのすべての長編がこの調子じゃないの?
基本的には語り手=副主人公が……時には主人公である人物すらが……
みな作家自身に重ねてある。
それはやはりやりすぎじやないの?
小説らしい小説と受けとめられるだろうか?
一般的にいって、小説らしい小説を読みたい読者を取り込めない。
どうしてこのように、世界を狭く限られるんですか?
もし過去の大江さんの小説を読んでいる人であれば、
今回の「水死」はお勧めです。
アカリさんとの葛藤はすでにごまかしがきかないレベルに達している。
新しいキャラクターの「ゆないこ」も小説をヴァイタルにすることに成功した。
さらに「ウナイコ」のおかげで忘れえぬクライマックスとなった。
大江さんの本の中ではもっとも読者を急き立てるサスペンス仕立てになっている。
大江さんはこの小説が最後になることをにおわせているが、私には信じがたい。
この小説にも書いているように、
大江さんなら痴呆症になっても書き続けるのではないかと思う。
【今月の累積距離】 381.29km
【ペース】 平均 6'09"/km、 最高 5'35"/km
【天気】 くもり
【気温】 最高 6℃、最低 2℃
【体重】 65.3kg
【コース】
淀駅~会社
【コメント】
大江さんの小説は全て読んでいるが、昔に比べると格段に読みやすくなった。
昔の作品は1つの文章が1ページ以上続くことも稀ではなかった。
しかも英語の関係詞の構文を多用しているので、
どの語句につながっているのか判断するのが難しかった。
大江さんは英語で考えた文章を和訳して原稿用紙に書いているのではないか、
という説もあった。
最近の大江さんの小説は、今回の「水死」も含め、自然な文章なので、読みやすい。
極端に長い文章や関係詞を使った構文はない。
(つまり、若いころはわざと難しい文章を書いていたのだ。)
しかし、それでも親切とは言えない。
読者が増えることはない。
大江さんの小説は、SF作品以外はすべていわゆる私小説で、
過去の数十冊の自分の本を引用しながら書いている。
昔の本をベースにしてストーリーが展開されるため、
初めての読者はまず理解ができない。
今回の「水死」では「臈たしアナベル・リイ 総毛立ちつ身まかりつ」、
「みずから我が涙をぬぐいたまう日」は最低読んでいないと、理解ができない。
できれば「新しい人よ眼ざめよ」、「奇妙な仕事」、
「取り替え子(チェンジリング)」ぐらいは読んでおきたい。
さらに「万延元年のフットボール」、「同時代ゲーム」も通奏低音として押さえておきたい。
かくして大江さんは読者は増えず、
新刊の印税が入らないという問題を経験することになる。
今回の小説には次のような台詞がある。
私らが生まれた時、すでに長江(大江)さんの最盛期は終わってたんです。
しかもそういう子供が同時代の日本文学を読み始めるとすれば、
十八、九を過ぎてからで、どう考えても、長江さんは私らの作家ではありませんでした。
それはその通り。これは長江さんとしての本格小説ではある。
文体にしても構造にしてもさ。
しかし、この十年、十五年、長江さんのすべての長編がこの調子じゃないの?
基本的には語り手=副主人公が……時には主人公である人物すらが……
みな作家自身に重ねてある。
それはやはりやりすぎじやないの?
小説らしい小説と受けとめられるだろうか?
一般的にいって、小説らしい小説を読みたい読者を取り込めない。
どうしてこのように、世界を狭く限られるんですか?
もし過去の大江さんの小説を読んでいる人であれば、
今回の「水死」はお勧めです。
アカリさんとの葛藤はすでにごまかしがきかないレベルに達している。
新しいキャラクターの「ゆないこ」も小説をヴァイタルにすることに成功した。
さらに「ウナイコ」のおかげで忘れえぬクライマックスとなった。
大江さんの本の中ではもっとも読者を急き立てるサスペンス仕立てになっている。
大江さんはこの小説が最後になることをにおわせているが、私には信じがたい。
この小説にも書いているように、
大江さんなら痴呆症になっても書き続けるのではないかと思う。
by totsutaki2
| 2013-01-28 22:20
| 読書
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