自省録

2012/8/11 ヴェニスの商人

【走った距離】  26.43km
【今月の累積距離】  137.37km
【天気】 曇りのち雨 
【気温】 最高 31℃、最低 27℃
【体重】  62.8kg
【コース】
自宅~会社~伏見
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【コメント】
ヴェニスの商人。

以前に芝居を観たとき、
尽きることのない比喩と豊饒な表現に溢れた長台詞に感心した。
台本を読んでもやはり長かった。
例を紹介。

サレアリオー そうさ、ぼくだって、熱いスープをきます息ひとつ、
吹いただけでも大事だ、たちまち瘧にかかってしまうだろう。
その息が、もし海の上なら、
どんな疾風となって荒れ狂うかもしれないと思うからね。
そればかりか、砂時計の砂が流れ落ちるのを見るにつけても、
中洲や浅瀬のことを想わずにはいられないだろう。
船荷を一杯積んだぼくのアンドルー号が、砂上に乗りあげ、
その大帆柱を横ざまに倒して、
自分の墓穴に口づけしている姿が眼に浮ぶのだ……
教会へ行けば行くで、その聖なる建物の石組みを目にすれば、
どうしてあの恐しい暗礁を想いださずにいられるだろう? 
だって、そいつがやさしい船の横腹にぶつかりでもしようものなら、
積みこんだ香料は海のうえに撒きちらされ、
荒れすさぶ波も絹の晴着をまとうというわけで、手っとり早く言えば、
いま、これだけあると思った財産が、
瞬間にして無に帰してしまうのだからね。
ぼくだって、そのくらいの想像力はある、とすればだ、その結果、
どれだけ気がめいるかくらい想像できないはずはあるまい? 
いや、もう何も言うことはない-解っているよ、アントーニオー、
きみは船荷のことで気をくさらせているのだよ。

グラシャーノー では、ぼくは道化役とゆこう。
陽気に笑いさざめきながら老いさらぼうて皺をつけ、
酒びたしで肝臓をほてらせるがいい。
そのほうが苦しい溜息ついて、
その一息ごとに心臓を凍らせるより、よほどましだ。
熱い血のかよった人間が、石膏細工の爺様よろしく、
どうしてじっとしていなければいけないのだ? 
醒めながらうつらうつらと眠りこける、
ささいなことに気をいらだたせ、
そのたびごとに黄疸をつのらせる、
どうしてそんなことをするのだ? 
ひとつ、言わせてもらおう、アントーニオー  
ぼくはきみが好きだ、好きだからこそ言うのだが--
世の中には妙なやっかいて、顔中一杯に薄皮をかぶり、
まるで澱んだ水溜りよろしく意固地に押し黙っているが、
それというのも世間から、分別がある、落ちついている、
考え深いなどと評判をたてられたいだけのこと。
「吾こそは大預言者なり、いで、神託を述べん、犬ども黙れ」
と言わんばかりの面つきだ……
だが、アントーニオー、ぼくはそういう連中を知っている、
やつらは何も喋らぬという、
ただそれだけの理由から分別者で通っているのさ……
ところが、そいつに一度でも口を聞かせてみるがいい、
とんだはた迷惑、それを聴いたら、たちまち地獄落ちだ、
たとえ相手が兄弟でも、
つい馬鹿野郎とどなりつけずにはいられぬだろうからな。
その話はいずれまたゆっくりすることにして、まあ。
やめにしたがいい、ふさぎの虫を餌にして、
世間の評判というだぼはぜ釣りに憂き身をやつすなどということは……
行こう、ロレンゾー。
しばらくお別れだ、この説教の結びは、
いずれ昼飯の後でつけることにしよう。

ポーシャ もし善を行うのが、
それを知ることと同じくらいに易しいものなら、
小さな礼拝堂はたちまち大伽藍と化し、
貧しい小屋も立派な王宮に変るだろう。
神父様にしても、自分の口にするお説教が守れれば、それこそ聖者。
なにをしたらいいか、それを教えるだけなら、
私にもいくらでも出来ます。
でも、その自分の教えの一つでも守れと言われたら、
そうたやすくは出来ません………
頭は、逸る血をおさえる掟を作りもしましょう、
でも、火と燃える情熱は冷たい鉄の鋳型を越えて流れだす  
青春は手に負えない気ちがい兎、
ちんばの分別が仕掛けて歩く忠告の網を、苦もなく跳び越える……
無駄なこと、そうしていくら理窟をこねてみたところで、
私が夫を選ぶのになんの役にもたちはしない。
ああ、もうたくさん、「選ぶ」などという言葉は! 
私には、好きな人を選ぶことも、
嫌いな人を断ることもできないのだもの――
生きている娘の意思が、死んでしまった父親の遺志で縛られているのだもの
酷いとは思わないかい、ネリサ、
自分で選ぶことも断ることもできないというのは?


物語は16世紀末、数隻の貿易船を持つヴェネツィア共和国の商人
アントーニオーが親友のためにユダヤ人の高利貸しシャイロックから
借金をする。ところが返済期限になっても船が返ってこない。
借金の形に1ポンド(454g)の肉を取られそうになり、
絶体絶命のアントーニオー。
その時、法学博士に扮した親友のフィアンセのポーシャが、
シャイロックをやり込め、アントーニオーを助ける。
(この部分も長い)

シャイロック その好意というやつを、
ひとつ御覧に入れようではありませんか。
これから公証人のところまで御足労いただいて、
判さえついてもらえばいい。
それに、これはほんの一興、戯れごとのつもりで、
もし証文記載のこれこれの金額をですな、
これこれの日、これこれの場所において返済できぬときには、
そのかたとして、きっちり1ポンド、
その、あんたの体の肉を頂戴したい。
どこでもおれの好きなところを切りとっていいということにして
いただきたいもので。

ポーシャ 待て、まだあとがある。
この証文によれば、血は一滴も許されていないな――
文面にははっきり「一ボンドの肉」とある。
よろしい、証文のとおりにするがよい、憎い男の
肉を切りとるがよい。
ただし、そのさい、クリスト教徒の血を一滴でも流したなら、
お前の土地も財産も、ヴェニスの法律にしたがい、国庫に没収する。

ポーシヤ 待て、シャイロック。
当法廷はまだお前に用がある……
ヴェニスは法律により、かく規定する。
ヴェニス市民に非ざる者にして、
市民の生命に危害を加えんともくろみしこと明白になりたる場合は、
その企図の直接なると間接なるとを問わず、
危害を加えられんとしたる側において、
相手の財産の一半を取得し、
他の一半は国庫の臨時 収入として没収する。
かつ罪人の生死は公爵の裁量に委ねらるべきものとし、
何人もこれに容喙することを得ず……
現在のお前の立場がこれに該当する。
なぜなら、お前の行為が明白にそれを示しているからだ。
すなわち、お前は間接に、いや、直接にも、
被告の生命に危害を加えようともくろみ、
ただいま読んで聴かせたごとき罪科を
われとわが身に招いたのである……
坐れ、よいか、あとは公爵の慈悲を頼むほかはない。


最後に私の好きなポーシャの慈悲論:
ポーシヤ 慈悲は強いらるべきものではない。
恵みの雨のごとく、天よりこの下界に降りそそぐもの。
そこには二重の福がある。
与えるものも受けるものも、共にその福を得る。
これこそ、最も大いなるものの持ちうる最も大いなるもの、
王者にとって王冠よりもふさわしき徴となろう。
手に持つ笏は仮の世の権力を示すにすぎぬ。
畏怖と尊厳の標識でしかない。
そこに在るのは王にたいする恐れだけだ。
が、慈悲はこの笏の治める世界を超え、
王たるものの心のうちに座を占める。
いわば神そのものの表象だ。
単なる地上の権力が神のそれに近づくのも、
その慈悲が正義に風味を添えればこそ。


カナル・グランデに架かるリアルト橋。
このあたりがヴェネツィア共和国の金融、商業の中心地だった。
ヴェニスの商人はフィクションだが、
黒いトーガを羽織り、黒い帽子をかぶったヴェネツィアの商人が
アントーニオーのようにこの橋の周りで商談をしていたのだろう。
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証券取引所跡。
アントーニオーとシャイロックのようなヴェネツィア人とユダヤ人が
ここで交渉をしていたのだろう。
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by totsutaki2 | 2012-08-11 21:48 | 読書

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