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自省録

2012/7/28 マクベス

【走った距離】  27.36km
【今月の累積距離】  310.75km
【ペース】 平均 6'14"/km、 最高 5'44"/km
【天気】 快晴 
【気温】 最高 35℃、最低 29℃
【体重】  62.7kg
【コース】
毛馬~枚方新橋
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【コメント】
マクベス
ウィリアム・シェイクスピア
福田恆存訳、新潮文庫
2012/7/28 マクベス_b0217643_1971543.jpg


ハムレットが悲劇に巻き込まれたのに対し、
マクベスは主君を裏切り、暗殺して悲劇を巻き起こす。

犯行前の躊躇、優柔不断、
犯行後の乱心、
極限状況の人間の弱さ、自らの心に追いつめられる心理の変化を
リズム感のある簡潔な文章、豊かな表現力で、冷徹に描く。
古典中の古典であるが、戯曲「マクベス」が白日に曝しているのは、
時代の垣根も世界の垣根も越えた、普遍的なす人間心理。

シェークスピアの戯曲というと、ロミオとジュリエットやベニスの商人、
真夏の夜の夢のような長台詞と洪水のようにあふれる表現をイメージしたが、
マクベスは文章、表現とも驚くほどシンプル。
それがリズム感を産み出している。

魔女の予言を受けるマクベス

マクベス    口をきげ、出来るものなら。いったい何者だ、貴様たちは?
第一の魔女  よう戻られた、マクベス殿! お祝い申しあげますぞ、グラミスの領主様!
第二の魔女  よう戻られた、マクペス殿! お祝い申しあげますぞ、コーダの領主様!
第三の魔女  よう戻られた、マクペス殿! いずれは王ともなられるお方!

主君殺しをマクベスに奮い立たせるマクベス夫人

マクベス夫人 烏の声もしわがれる、
運命に見入られたダンカンが私の城に乗りこんで来るのを告げようとして……
さあ、血みどろのたくらみごとに手を貸す悪霊たち、私を女でなくしておくれ、
頭の天辺から爪先まで、恐ろしい残忍な心でいっぱいにしておくれ! 
この血をこごらぜ、優しい情けの通い路をふさいでおくれ、
押寄せる悔いの重荷に、この酷たらしい心がぐらつき、
弱々しく潰え去ったりしないように! 
さあ、人殺しの手先ども、このふくよかな女の胸に忍びこみ、
甘い乳を苦い胆汁に変えてしまっておくれ、
今も今、その見えぬ姿で、どこか悪事のかげをうろつきまわっているお前たち、
何をぐずぐずしているのだ! 
さあ、暗黒の夜、早く、ここへ、どすぐろい地獄の煙に身を包んで! 
私の鋭い匕首に、己れの造る傷口を見せないように、
天が闇のとばり越しに「待て!」と叫んだりしないように!


逡巡するマクベス

マクベス   やってしまって、それで事が済むものなら、
早くやってしまったほうがよい。
暗殺の一網で万事が片附き、引きあげた手もとに大きな宝が残るなら、
この一挙がすべてで、それだけで終りになるものなら……
あの世のことは頼まぬ、ただ時の浅瀬のこちら側で、
それですべてが済むものなら、先ゆきのことなど、
誰が構っておられるものか。
だが、こういうことは、かならず現世で裁きが来る-
誰にでもよい、血なまぐさい悪事を唆してみろ、
因果は逆にめぐって、元兇を倒すのだ。
この公平無私の裁きの手は、毒酒の杯を、
きっとそれを盛った奴の唇に押しつけて来る。
王が今ここにいるのは二重の信頼からだ。
まず、おれは身内で臣下だ、いずれにしろ、そんなことはやりっこない、
それに、今夜は主人役、逆意をいだいて近よる者を防ぐ役目、
それがみずから匕首をふりかざすなど、もってのほかだ。
そればかりか、ダンカンは、生れながらの穏和な君徳の持主、
王として、一点、非の打ちどころがない、うっかり手をくだそうものなら、
その平素の徳が、天使のように大声で非道の罪を読みあげよう、
そして憐みという奴が、生れたての赤子の姿を借り、疾風にのって駆けまわる、
天童たちも眼に見えぬ大気の早馬に打ちまたがって御出馬だ、
それが世人の眼に無慚な悪行を吹きっける、そうなれば、涙の雨で風も凪ごう。
それに逆らってまで、意中の馬にあてる拍車は一つもない、
ただ野心だけが跳びはねたがる、跳びのったはよいが、
鞍ごしに向う側に落ちるのが閲の山かー


主君を殺し、茫然自失となるマクベスと冷静に対処するマクベス夫人

マクベス    「もう眠りはないぞ!」その声が城の中にこだましていた、
「グラミスが眠りを殺してしまった、おかけでコーダはもう眠れない、
マクペスはもう眠れないぞ!」

マクベス夫人 誰がそんなことを? さっきから、たわいのないことばかり、
せっかくふるい立たせた男気を御自分で突きくずすようなもの。
さ、早くその手から罪のしるしを洗いおとして。
どうしてその短剣を持っていらしたのです? 
あの部屋においておかなければなりません、返していらっしゃい、
そして、あの二人の護衛に血を塗りつけてくるのです。

マクペス    もう行くのはいやだ。自分のやったことを、考えただけで、ぞっとする、
それをもう一度見るなどと、とても出来ない。
マクベス夫人 腑甲斐のない! 短剣をおよこしなさい。
眠っている人間や死人は人形同然。
子供ででもなければ、誰が絵に描いた悪魔をこわがるものですか。
血を流していたら、その血で護衛の顔を化粧してやる、
どうしても二人の仕業と見せかけなければ。

(上の部屋へあがって行く。外から門を叩く音が開えてくる)
マクベス    あの戸を叩く音は、どこだ? 
どうしたというのだ、音のするたびに、びくびくしている? 
何ということだ、この手は? ああ! 今にも自分の眼玉をくりぬきそうな! 
大海の水を傾げけても、この血をきれいに洗い流せはしまい? 
ええ、だめだ、のたうつ波も、この手をひたせば、紅一色、
緑の大海原もたちまち朱と染まろう。

マクベス夫人 私の手も、おなじ色に、
でも、心臓の色は青ざめてはいない、あなたのように。

(戸を叩く音)
南の戸を叩いている。戻りましょう、部屋へ。
ちょっと水をかければ、きれいに消えてしまう、
何もかも。訳もないこと!勇気をどこかへ置き忘れておいでらしい。

(戸を叩く音)
そら!また、叩いている。さ、夜着をお召しになって、
誰かに起されても、ずっと寝ずにいたと感づかれないように。
そんな、何かに心を奪われているような様子は禁物、元気をお出しになって。

マクベス   自分のやったことを憶い出すくらいなら、
何も知らずに心を奪われていたほうがましだ。

(戸を叩く音)
ああ、その音でダンカンを起してくれ! 
頼む、そうしてくれ、出来るものなら!
 
(二人退場)

マクベスの最後

マクペス   いくらあがこうと、むだだ。
貴様の剣がどれほど鋭かろうと、この手ごたえなしの空気は斬れぬ、
おれの体に傷はつけられぬぞ。
その手に負える相手をぬらえ、おれの命はまじないつきだ、
女から生れた人間には手がつけられないのだぞ。

マクダフ   ふむ、そんなまじないの効きめ、いつまで続くものか、
もうだめだぞ。
貴様が大事に奉っている悪魔の手先に、もう一度うかがいをたててみろ、
このマクダフは生れるさきに、月たらずで、母の胎内からひきずりだされた男だぞ。

マクペス   畜生、憎いその舌の根、その一言で気もくじけた! 
あのいかさまの鬼婆め、もう信用しないぞ、
このおれをことごとに二重の罠に引掛け、約束は言葉どおりに守りながら、
最後には、まんまと裏をかく。よせ、貴様を相手にしたくない。

マクダフ   卑怯者、それなら剣を棄て、生きて世間の見せものになれ。
怪物よろしく、貴様の絵姿を看板にかかげ、その下にこう書いてやる、
「さあ、さあ、暴君を御覧よ」とな。

マクベス   誰が膝まずいてマルコムの足をなめ、衆愚のやじを浴びるものか。
たとえバーナムの森がダンシネインの城に迫ろうと、
女から生れぬ貴様を相手にしようと、
さあ、これが最後の運試しだ。
このとおり頼みの楯も投げすてる、打ってこい、マクダフ、
途中で「待て」と弱音を吐いたら地獄落ちだぞ。

(二人は城壁の下を、右に左に斬り結ぶ。マクベス、ついに殺される)

きれいは穢ない、穢ないはきれい。さあ、飛んで行こう、霧のなか、汚れた空をかいくぐり。




by totsutaki2 | 2012-07-28 19:09 | 読書

市民ランナーの市井の日常。 日々の出来事、感動を忘れないために
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