2012/1/1 氷川清話1
【走った距離】 21.22km
【今月の累積距離】 21.22km
【ペース】 平均 6'18"/km、 最高 5'18"/km
【天気】 くもり
【気温】 最高 11℃、最低 2℃
【体重】 65.3kg
【コース】
【コメント】
淀川河川敷 堤防からの初日の出。
氷川清談は勝海舟が晩年赤坂氷川の自邸で語った、人物、政治評論、人生論。
下手な幕末小説よりもはるかに面白い第1級の幕末本。
龍馬がゆく、花神、翔ぶが如く、坂の上の雲など
司馬遼太郎の一連の幕末、明治期の小説を読んだ後にお勧め。
勝海舟の考え方から深く学ぶところがあった。
2012年のブログは氷川清話の感想から始めたい。
きせん院の戒め
昔本所に、きせん院といふ一個の行者があって、
その頃流行した富籤の祈祷がよく当るといふので、非常な評判であったが、
おれの老父が、それと親しかったものだから、おれもたびたび行ったことがある。
ところが越前守が出て来て、やかましく富などの取締をせられてからは、
忽ち流行らなくなった。
それから段々とおちぶれて、後には汚い長屋に住んで居たが、
誰も末路といふものは、憐れなもので気の毒だから、
時々野菜などを持って行ってやった。
この行者も、もとはなかなかのもので、肉食妻帯はおろか、
間男なんか平気なもんで、一種太いところを持って居たが、
かう落槐してからは、身体も気分も段々と弱り込んで来た。
或る日のこと、おれは例のごとく何か持って見舞ひに行ったが、
彼はおれに向ひ、
「貴下はまだ若いが、なかなか根気が強くって末頼母しい方だによって、
私が一言お話をしておきますから、是非覚えて居て下さい。
必ず思ひ当ることがあります。
一体、私の祈祷が当らなくなつたに就いては、二つの理由があります。
一つの理由は、或る日一人の婦人が、富の祈祷を頼みにやって来ました。
ところがそれが素敵な美人であったから、覚えず煩悩に駆られて、
それを口説き落し、それから祈祷をしてやりました。
ところが四、五日すると、その祈祷に効験があって、
当籤をしたといって礼に来ましたから、またまた口説き掛けると、
彼の美人は恐ろしい眼で睨みつけ、
”亭主のある身で不義な事をしたのも、亭主に富籤を取らせたい切な心があつたばかりだ。
それに又候不義を仕掛けるなどとは、不届千万な坊主めが”
と叱った。
その眼玉と叱声とがしみじみ身にこたへた。
それから今一つは、難行苦行をする身であるから、
常に何か生分のある物を喰って、滋養を取って居ましたが、
或る日の事、両国で大きなすっぽんを買って来た。
ところが誰も怖がつて料理をする者がないから、私が自分で料理をせうとすると、
彼のすっぽんめが首を持ち上げて、大きな眼玉をして私を睨んだ。
私はなーにと言ひつつ首を打ち落して料理して喰って見たが、しかし何となく気にかヽった。
この二つの事が、始終私の気にかゝって居て、
祈祷もいつとなく次第に当らなくなったのです。
それといって、何もこの二つがたゝるといふわけでもあるまいが、
つまり自分の心に咎めるところがあれば、いつとなく気がうゑて来る。
すると鬼神と共に動くところの至誠が乏しくなって来るのです。
そこで、人間は平生踏むところの筋道が大切ですよ」
と言って聞かせた。
この話を聞いて、おれも豁然として悟るところがあり、
爾来今日に至るまで、常にこの心得を失はなかった。
全体おれがこの歳をして居りながら、身心共にまだ壮健であるといふのも、
畢竟自分の経験に顧みて、いさゝかたりとも人間の筋道を踏み違へた覚えがなく、
胸中に始終この強味があるからだ。
この一個の行者こそ、おれが一生の御師匠様だ。
その場しのぎで人間の筋道を踏み違えると、
その時は良くても自分の心に恥じる気持ちが後に続く。
その結果、信念が弱まり、自信が持てなくなり、人を説得できなくなる。
天地神明に恥じず、これがすべてのスタートポイントである。
【今月の累積距離】 21.22km
【ペース】 平均 6'18"/km、 最高 5'18"/km
【天気】 くもり
【気温】 最高 11℃、最低 2℃
【体重】 65.3kg
【コース】
【コメント】
淀川河川敷 堤防からの初日の出。
氷川清談は勝海舟が晩年赤坂氷川の自邸で語った、人物、政治評論、人生論。
下手な幕末小説よりもはるかに面白い第1級の幕末本。
龍馬がゆく、花神、翔ぶが如く、坂の上の雲など
司馬遼太郎の一連の幕末、明治期の小説を読んだ後にお勧め。
勝海舟の考え方から深く学ぶところがあった。
2012年のブログは氷川清話の感想から始めたい。
きせん院の戒め
昔本所に、きせん院といふ一個の行者があって、
その頃流行した富籤の祈祷がよく当るといふので、非常な評判であったが、
おれの老父が、それと親しかったものだから、おれもたびたび行ったことがある。
ところが越前守が出て来て、やかましく富などの取締をせられてからは、
忽ち流行らなくなった。
それから段々とおちぶれて、後には汚い長屋に住んで居たが、
誰も末路といふものは、憐れなもので気の毒だから、
時々野菜などを持って行ってやった。
この行者も、もとはなかなかのもので、肉食妻帯はおろか、
間男なんか平気なもんで、一種太いところを持って居たが、
かう落槐してからは、身体も気分も段々と弱り込んで来た。
或る日のこと、おれは例のごとく何か持って見舞ひに行ったが、
彼はおれに向ひ、
「貴下はまだ若いが、なかなか根気が強くって末頼母しい方だによって、
私が一言お話をしておきますから、是非覚えて居て下さい。
必ず思ひ当ることがあります。
一体、私の祈祷が当らなくなつたに就いては、二つの理由があります。
一つの理由は、或る日一人の婦人が、富の祈祷を頼みにやって来ました。
ところがそれが素敵な美人であったから、覚えず煩悩に駆られて、
それを口説き落し、それから祈祷をしてやりました。
ところが四、五日すると、その祈祷に効験があって、
当籤をしたといって礼に来ましたから、またまた口説き掛けると、
彼の美人は恐ろしい眼で睨みつけ、
”亭主のある身で不義な事をしたのも、亭主に富籤を取らせたい切な心があつたばかりだ。
それに又候不義を仕掛けるなどとは、不届千万な坊主めが”
と叱った。
その眼玉と叱声とがしみじみ身にこたへた。
それから今一つは、難行苦行をする身であるから、
常に何か生分のある物を喰って、滋養を取って居ましたが、
或る日の事、両国で大きなすっぽんを買って来た。
ところが誰も怖がつて料理をする者がないから、私が自分で料理をせうとすると、
彼のすっぽんめが首を持ち上げて、大きな眼玉をして私を睨んだ。
私はなーにと言ひつつ首を打ち落して料理して喰って見たが、しかし何となく気にかヽった。
この二つの事が、始終私の気にかゝって居て、
祈祷もいつとなく次第に当らなくなったのです。
それといって、何もこの二つがたゝるといふわけでもあるまいが、
つまり自分の心に咎めるところがあれば、いつとなく気がうゑて来る。
すると鬼神と共に動くところの至誠が乏しくなって来るのです。
そこで、人間は平生踏むところの筋道が大切ですよ」
と言って聞かせた。
この話を聞いて、おれも豁然として悟るところがあり、
爾来今日に至るまで、常にこの心得を失はなかった。
全体おれがこの歳をして居りながら、身心共にまだ壮健であるといふのも、
畢竟自分の経験に顧みて、いさゝかたりとも人間の筋道を踏み違へた覚えがなく、
胸中に始終この強味があるからだ。
この一個の行者こそ、おれが一生の御師匠様だ。
その場しのぎで人間の筋道を踏み違えると、
その時は良くても自分の心に恥じる気持ちが後に続く。
その結果、信念が弱まり、自信が持てなくなり、人を説得できなくなる。
天地神明に恥じず、これがすべてのスタートポイントである。
by totsutaki2
| 2012-01-01 19:57
| 読書
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