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自省録

2013/3/31 ドストエフスキー 『悪霊』

【走った距離】  25.75km
【今月の累積距離】  309.43km
【ペース】 平均 6'22"/km、 最高 5'32"/km
【天気】 くもり 
【気温】 最高 15℃、最低 11℃
【体重】  63.0kg
【コース】
自宅~豊里大橋
【コメント】
ドストエフスキー 『悪霊』
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『罪と罰』、『カラマーゾフの兄弟』と並ぶドストエフスキーの代表作。
「悪霊どもはその人から出て、豚の中に入った。
すると、豚の群れは崖を下って湖になだれ込み、おぼれ死んだ」
(新約聖書<ルカによる福音書>第八章三二-三六節)。
『悪霊』とは「悪霊に取りつかれ、崖を下って湖になだれ込み、おぼれ死ぬ人々」
の物語である。
無気力化する貴族階級、プチブル化する中産階級、
それに反比例して野放図に荒れくる下層階級という革命前の不安定な世情の下、
妄念に取り憑かれ、カタストロフ(大惨事)に至る人々を描いている。

ドストエフスキーの小説の楽しみの一つは
ドストエフスキーが創作した現実にはありえない性格の人物の行動、思考を追うこと。
『悪霊』では主人公のニコライ・スタヴローギンの人物設定が傑出。
類い稀な美貌と知力をもつ全編の主人公。
徹底した虚無主義者。
奇行や放蕩を繰り返し、ヨーロッパを放浪していたが、
いっさいの欲望に倦みつかれ、生きる屍と化して故郷に戻ってきた。
賭博に負けて狂女と結婚しているが、
放浪中に知り合った多くの女性、人妻と関係し、妊娠させる。
(出版社から掲載を拒否された原作の1章では
少女を陵辱し自殺に追いやっている。)
女性に手の速いニヒリストという点で机龍之介に似ている。
自らは手を下さず、人々を操り、放火、殺人を引き起こし、
町中を自殺者が三人、殺害される者が六人、病死者二人というカタストロフに巻き込む。

登場人物の会話で小説が進行するが、本当のことを言わない。
登場人物同士で語られる内容や、指示される人物が、曖昧模糊としているため、
嘘か真実かをその場で見きわめられない。
登場人物の「二枚舌」がプロットの前後関係をもつれさせる。
真相は別にあると念頭に置きながらストーリーを追う必要がある。

革命期の作家
先日「ヴィクトル・ユーゴとフョードル・ドストエフスキーの小説が違うのと同じぐらい
ベートーヴェンとマーラーの交響曲は違う。」
と書いたが、ユーゴが6月革命を舞台に『レ・ミゼラブル』を創作し、
ドストエフスキーがロシア革命前の激動の社会を舞台に『悪霊』を描いたのは
興味深い一致である。

現代史との関係
『悪霊』とは妄念やイデオロギーという悪霊に取りつかれた人々を描いた物語。
しかも登場人物の多くが社会の転覆を企てようとする組織に属す。
30年以上前の日本人は『悪霊』から連合赤軍を連想し、
現代の日本人はオーム真理教とサリン事件を連想する。
ドストエフスキーは決してロシア帝政末期の人間を描いたのではなく、
人間心理の普遍的な弱さを描いていることがわかる。
「悪霊」は今なお謎に包まれているオーム事件に光を当てる照明でもある。

宗教的観点
ニコライ・スタヴローギンが小説のなかで担っている役割は、
キリストの仮面をかぶった反キリスト、ないしは堕天使である。
ニコライ・スタヴローギンは無神論者であるが、
「完全な無神論は、完全な信仰へ向かう道である」。
スタヴローギンは、その無神論が聖性への一歩手前にありながら、
最後の壁を越える契機を得ることなく破滅に終わってしまう
悲劇的な人物として描かれている。

ファウストとの関係
ドストエフスキーは『悪霊』を構築するにあたり、ゲーテの『ファウスト』から、
いくつかの重要なモチーフを借用している。
『ファウスト』ではマルガレーテ(グレートヒエン)がファウストの子供を
池に捨てたことで精神に異常をきたす。
『悪霊』では狂女マリヤ・レビヤートキナはニコライの子供を池に沈めたと信じ込んでいる。
『ファウスト』では干拓事業に邪魔な老夫婦の家をメフィストが焼き討ちする。
『悪霊』では扇動された工場労働者が街に火を放つ。




by totsutaki2 | 2013-03-31 20:43 | 読書

市民ランナーの市井の日常。 日々の出来事、感動を忘れないために
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