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自省録

2012/9/8 アントニーとクレオパトラ

【走った距離】  6.22km
【今月の累積距離】  75.03km
【天気】 曇り 
【気温】 最高 29℃、最低 25℃
【体重】  63.6kg
【コース】
淀駅~会社
【コメント】
アントニーとクレオパトラ

ウィリアム・シェイクスピア
福田恆存訳、新潮文庫
2012/9/8 アントニーとクレオパトラ_b0217643_16183461.jpg


「ジュリアス・シーザー」は悲劇時代の始まりだが、
「アントニーとクレオパトラ」は四大悲劇の後。

前者では上り調子のアントニー、後者では下り坂を転げ落ちるアントニー。
諦念と倦怠。
爛熟と崩壊。

オクテイヴィアス・シーザー(アウグストゥス)は上り坂、
配下にはアグリッパ(マルクス・ウィプサニウス・アグリッパ)、
メーシナス(ガイウス・マエケナス)。

クレオパトラがアントニーを誘惑する場面

 委細をお話し申しあげましょう。
まず身を横たえたる小舟は、
磨きあげたる玉座さながら燃ゆるがごとく水面に浮び、
艫に敷かれた甲板は金の延板、帆には紫の絹を張り、
焚きこめられた香のかおりを慕って、風は気もそぞろの恋わずらい、
擢はいずれも白銀、笛の音に合わせての見事な水さばきは、
立ち騒ぐ波も我遅れじと慕いまつわるかに見えました。
かの女人その人はと言えば、到底言葉には尽せませぬ、
垂れ布は色絹に金糸銀糸の縫取り、
その陰にひっそり身を横たえた姿は、
なるほど、かの絵筆の妙よく自然を超ゆる画中のヴィーナスも
遠く及ぶとこるにあらずとでも申しましょうか。
両脇に侍する童は頬に笑窪を湛え、笑めるキューピッドさながら、
五色の扇をもって風を送ると、冷めた頬は二たび上気して、
その薄い肌に血がのぼり、かくして上げたり下げたり。
侍女たちときては、水の精さながら、あたかも人魚の勢揃い、
その目なざしは絶えず女人に注がれ、送る会釈も趣あって科のごとく、
主の美をいよいよ引立てる。
艫には人魚に扮した女がひとり舵を操る、
と、見る間に絹の帆が大きく脹れあがり、
花かと見紛う優しい手が、そつなく綱を捌く。
それにつれて、小舟からは、えもいわれぬかおりが流れて来て、
近くの岸にいる者の鼻を打つ。
街々は女人の上にその住民を吐き出し、
アントニーは広場の演壇にただ一人残され、
空に向って口笛を吹いておりましたが、
その空気にしても後に真空を残して行けるものなら、
同じクレオパトラを見に飛んで行き、自然界に大穴あけたに違いない。


アクティウムの海戦の敗戦

 身方は疫病にかかっているようなものだ、
既に死斑が現われて、死はどうにも避けられない。
あの色気違いのエジプト女め---
いっそ癩病にでも取りつかれるがいい!---
正に戦い酣で、いずれに勝ら味があるか、
双子の兄弟同様、にわかに見分けがつかぬ有様、
というよりは、むしろこちらが兄貴分と見えたのだが---
そこを風が一吹き、虻が飛んで来て女に止った、
女はたちまち六月の牝牛よろしく!---
帆を揚げて逃出し始めたというわけさ。
女が舳を風のある方へ向けたものだから、
その魔力に俯抜けの殻のアントニー、
船の帆を羽ばたくように大きく拡げたかと思うと、
雌の尻を追う鴨よろしく、今酣の戦を打ち捨て、一目散に逃出した。
これほど恥知らずの戦いは見たことがない、いさおし、男、
体面が、こうまで辱しめられたためしはない。
身方の命数も海ではついに事切れ、海底の藻屑と消え去った。
我らのアントニーがかつてのとおりの武人であったなら、
万事うまく行ったろう。
ああ、みずから先んじて敗走の手本を見せるなどと、
全くふざけた話ではないか!





by totsutaki2 | 2012-09-08 16:38 | 読書

市民ランナーの市井の日常。 日々の出来事、感動を忘れないために
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