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自省録

2012/5/6 神曲2 地獄篇


【コメント】
地獄篇 Inferno

地獄界の構造

『神曲』において、地獄の世界は、漏斗状の大穴をなして
地球の中心にまで達し、
最上部の第一圏から最下部の第九圏までの
九つの圏から構成される。
かつて最も光輝はなはだしい天使であったルチフェロが神に叛逆し、
地上に堕とされてできたのが地獄の大穴である。
地球の対蹠点では、魔王が墜落した衝撃により、煉獄山が持ち上がった。
2012/5/6 神曲2 地獄篇_b0217643_20175348.jpg


地獄の門 - 「この門をくぐる者は一切の希望を捨てよ」。
アケローン川 - 冥府の渡し守カロンが亡者を櫂で追いやり、
 舟に乗せて地獄へと連行していく。
第一圏 辺獄(リンボ) - 洗礼を受けなかった者が、
 呵責こそないが希望もないまま永遠に時を過ごす。
 ウェルギリウス、ホメロス、カエサルなどキリスト生誕以前の人物は
 キリスト教の恩寵を受けることがなかったため、
 最後の審判の日までここ辺獄(リンボ)にいる。
 地獄の入口では、冥府の裁判官ミーノスが死者の行くべき地獄を割り当てる。
第二圏 愛欲者の地獄 - 肉欲に溺れた者が、荒れ狂う暴風に吹き流される。
第三圏 貪食者の地獄 - 大食の罪を犯した者が、
 ケルベロスに引き裂かれて泥濘にのたうち回る。
第四圏 貪欲者の地獄 - 吝嗇と浪費の悪徳を積んだ者が、
 重い金貨の袋を転がしつつ互いに罵る。
第五圏 憤怒者の地獄 - 怒りに我を忘れた者が、
 血の色をしたスティージュの沼で互いに責め苛む。
第六圏 異端者の地獄 - あらゆる宗派の異端の教主と門徒が、
 火焔の墓孔に葬られている。
第七圏 暴力者の地獄 - 他者や自己に対して暴力をふるった者が、
 暴力の種類に応じて振り分けられる。
  第一の環 隣人に対する暴力 - 隣人の身体、財産を損なった者が、
   煮えたぎる血の河フレジェトンタに漬けられる。
  第二の環 自己に対する暴力 - 自殺者の森。自ら命を絶った者が、
   奇怪な樹木と化しアルピエに葉を啄ばまれる。
  第三の環 神と自然と技術に対する暴力 - 神および自然の業を蔑んだ者、
   男色者に、火の雨が降りかかる。
第八圏 悪意者の地獄 - 悪意を以て罪を犯した者が、
   それぞれ十の「マーレボルジェ」(悪の嚢)に振り分けられる。
  第一の嚢 女衒 - 婦女を誘拐して売った者が、
    角ある悪鬼から鞭打たれる。
  第二の嚢 阿諛者 - 阿諛追従の過ぎた者が、
    糞尿の海に漬けられる。
  第三の嚢 沽聖者 - 聖物や聖職を売買し、神聖を金で汚した者(シモニア)が、
    岩孔に入れられて焔に包まれる。
  第四の嚢 魔術師 - 卜占や邪法による呪術を行った者が、
    首を反対向きにねじ曲げられて背中に涙を流す。
  第五の嚢 汚職者 - 職権を悪用して利益を得た汚吏が、
    煮えたぎる瀝青に漬けられ、12人の悪鬼であるマレブランケから
    鉤手で責められる。
  第六の嚢 偽善者 - 偽善をなした者が、
    外面だけ美しい金張りの鉛の外套に身を包み、ひたすら歩く。
  第七の嚢 盗賊 - 盗みを働いた者が、
    蛇に噛まれて燃え上がり灰となるが、再びもとの姿にかえる。
  第八の嚢 謀略者 - 権謀術数をもって他者を欺いた者が、
    わが身を火焔に包まれて苦悶する。
  第九の嚢 離間者 - 不和・分裂の種を蒔いた者が、
    体を裂き切られ内臓を露出する。
  第十の嚢 詐欺師 - 錬金術など様々な偽造や虚偽を行った者が、
    悪疫にかかって苦しむ。
第九圏 裏切者の地獄 - 「コキュートス」(嘆きの川)と呼ばれる氷地獄。
   同心の四円に区切られ、最も重い罪、裏切を行った者が永遠に氷漬けとなっている。
   裏切者は首まで氷に漬かり、涙も凍る寒さに歯を鳴らす。
  第一の円 カイーナ Caina - 肉親に対する裏切者
  第二の円 アンテノーラ Antenora - 祖国に対する裏切者
  第三の円 トロメーア Ptolomea - 客人に対する裏切者
  第四の円 ジュデッカ Judecca - 主人に対する裏切者
   地獄の中心ジュデッカのさらに中心、地球の重力がすべて向かうところには、
   神に叛逆した堕天使のなれの果てである魔王ルチフェロ(サタン)が
   氷の中に永遠に幽閉されている。
   魔王はかつて光輝はなはだしく最も美しい天使であったが、
   今は醜悪な三面の顔を持った姿となり、半身をコキュートスの氷の中に埋めていた。
   魔王は、イエス・キリストを裏切ったイスカリオテのユダ、
   カエサルを裏切ったブルートゥスとカッシウスの三人
   をそれぞれの口で噛み締めている。

第5歌 26-48

寿岳文章訳

苦患の声音が私の耳にきこえ始める。いまや私は、甚だし
 い嘆きが私の胸打つところへ来たのだ。
そこは、一切の光、もだしかき消え、攻めあう風にうちま
 くられる時の嵐の海のように、ただもうおどろおどろと
 鳴りとどろく所。
やむまもなく吹きすさぶ地獄の業風が、亡者をひきとらえ、
 追い立て、打ちまくり、投げ散らし、責めの限りをつくす。
風のあらびの極みにあうと、亡者たちは叫び、泣き、かき
 くどき、ついには神の権能をののしり呪う。
私は知った、このような烈しい呵責が、理性を失い愛欲に
 ふける、肉の罪人たちの行きつく果であることを。
寒い季節に椋鳥が翼に支えられ、空を覆うて進むごと、地
 獄の業風は性悪しき亡霊たちを吹きまくる。
ここに、かしこに、下に、上にと、風はかれらを吹きまく
 る。休息は慮外としても、せめて苦痛の、いま少し少な
 かれとの望みすら絶えて無い。
鶴のむれが空に細長い列をつくり、鳴き交わしながら渡るよ
 うに、亡霊たちが悲嘆の声あげて来るのを私は見た、
吹きまくる風のあらびに運ばれて。


山川丙三郎訳

苦患の調はこの時あらたに我にきこゆ、
我はこの時多くの歎聲の我を打つところにいたれり 
わがいたれる處には一切の光默もだし、
その鳴ることたとへば異なる風に攻められ波たちさわぐ海の如し 
小止をやみなき地獄の烈風吹き荒れて魂を漂はし、
旋りまた打ちてかれらをなやましむ 
かれら荒ぶる勢ひにあたれば、そこに叫びあり、憂ひあり、
歎きあり、また神の權能を誹る言あり 
我はさとりぬ、かゝる苛責の罰をうくるは、
理性を慾の役となせし肉の罪人なることを 
たとへば寒き時椋鳥翼に支へられ、
大いなる隙なき群をつくりて浮び漂ふごとく、風惡靈を漂はし 
こゝまたかしこ下また上に吹送り、
身をやすめまたは痛みをかろむべき望みのその心を慰むることたえてなし 
またたとへば群鶴の一線長く空に劃し、
哀歌をうたひつゝゆくごとく、我は哀愁の聲をあげ
かの暴風に負れて來る魂を見き



愛欲者の圈 フランチェスカ・ダ・リミニ(第五歌)

神曲全篇の中でも最も著名な、
第五歌28ー138行に対するこの挿絵の発想を、
ブレイクは、かれの尊敬していたミケランジェロの、
システィナ礼拝堂の大祭壇画『最後の審判』から得たと言われるが、
その大胆でユニークな構図は、最大限にブレイク的であり、
恐らくかれの傑作の随一であろう。
下半部の黒ずんだ波浪から吹きおこるつむじ風に、
多くの愛欲者が包みこまれ、一巻きされたあと、
画面左上隅に姿を消す。中央右寄りの岸に
ウェルギリウスが立ち、哀憐の情にたえかね、
気遠くなってその脚下に倒れ伏したダンテを見おろしている。
多くの愛欲者の群から離れ、ただ二人きりのパオロとフランチェスカは、
ダンテの後方でつむじ風と同方向の左へ燃え上る火焔の中に見られる。
ウェルギリウスの上方には太陽の幻があり、
その中央に、恋のとりことなったランスロットの物語を読んで口づけあう
白熱の二人の姿を描く。
心にくい手法である。
「攻めあう風にうちまくられる時の嵐の海のように」との喩えを、
ブレイクはそのまま表現し、本文には名をあげられている竜巻の中の愛欲者たちを、
見定めのつかぬ不特定多数としたのも、
パオロとフランチェスカに焦点をしばるのに効果的である。
しかしブレイクは、これとよく似た構図の絵を何枚か残しているので、
これを単に第5歌に即した挿絵と見るべきではなく、
実はこの一枚にも、ブレイクの神話体系が秘められているのを忘れてはならない。
一つだけ言おうなら、太陽の幻の中の白熱した二人は、
実はダンテとベアトリーチエの流出であって、
詩霊の燃焼をあらわすものであろう。
2012/5/6 神曲2 地獄篇_b0217643_2018392.jpg






by totsutaki2 | 2012-05-06 20:15 | 読書

市民ランナーの市井の日常。 日々の出来事、感動を忘れないために
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